2021年(令和3年)の作品 (189回~)

二月 190回
如月や泰然自若庭の石
一月 189回
ゆで卵子むけば春光反射せり

2020年(令和2年)の作品 (188回~177回)

十二月 188回
一寸の光陰重し老の冬
十一月 187回
万年青の実さびしき庭に目立つ赤
十一月 187回
稲穂波海になだるる山田かな
十月 186回
虫の声大きな耳がほしくなり
九月 185回
新茶古茶知りつくしたる急須かな
八月 184回
一撃を妻の背中に蠅叩き
七月 183回
尾瀬ヶ原旅してゐたり昼寝覚
六月 182回
桜蕊社の絵馬に降りそそぐ
五月 181回
散る桜地につくまでを立ち止まる
四月 180回
どことなく旅する地図や春炬燵
三月 179回
如雨露より四・五十本の春の雨
二月 178回
老齢を癒すこころの帰り花
一月 177回
初明り日の丸折り目つけたまま

2019年(平成31年、令和元年)の作品 (176回~165回)

十二月 176回
太平洋鏡となりて寒月を
十一月 175回
葉枯れした欅は空を広げたり
十月 174回
丘の径人待ち顔の女郎花
九月 173回
わが影に入りたき思いの残暑かな
八月 172回
端居して湯呑にうつる白き雲
七月 171回
花は葉に作句苦しむ余生かな
六月 170回
行李底に千人針や更衣
五月 169回
風薫る元号令和旅立てり
四月 168回
山水の韋駄天走り春の山
三月 167回
立春の今日あれこれと目論見ぬ
二月 166回
麦の芽や人に希望の言葉あり
一月 165回
病む妻の靴より聞こゆすがれ虫

2018年(平成30年)の作品 (164回~153回)

十二月 164回
毬栗の三つの命寄り合ひて
十一月 163回
竹林の縦の隙間や光る秋
十月 162回
草むしり死語とはならぬ軍手かな
九月 161回
万緑や山は山をば隠したり
八月 160回
香水に追ひ抜かれたる並木かな
七月 159回
滝しぶき手で合図してはなれたり
六月 158回
新緑を見よとこつそりガラス拭く
五月 157回
丘の径向うに春が立っている
四月 156回
降り出しも終りも見せぬ春時雨
三月 155回
つつまれし焼芋英字新聞紙
二月 154回
初午や妣の味するしもつかれ
一月 153回
リンゴのような嬰嬰の可愛いあくびかな

2017年(平成29年)の作品 (152回~141回)

十二月 152回
年送る杖ことばにも支えられ
十一月 151回
品書きに秋刀魚とありて女文字
十月 150回
立待月見ろよ見たかと雲の陰
九月 149回
暑き日や目鼻なきごと顔拭ふ
八月 148回
うたた寝を覚めれば軽し夏布団
七月 147回
柚子の花男の覚悟黙にあり
六月 146回
辞世の句をと語りし師逝く五月雨
五月 145回
花の昼茨城弁を憚らず
四月 144回
潮の風新芽は小さくかたかりき
三月 143回
水切りの石春風の中に消ゆ
二月 142回
散髪を終へて冬帽ゆるゆると
一月 141回
耳元に流るる瀬音初明

2016年(平成28年)の作品 (140回~129回)

十二月 140回
懸け大根火の見櫓の残る街
十一月 139回
住む郷の山紫水明十三夜
十月 138回
人はみな運命ありけり星流る
九月 137回
蛍飛ぶ自在に光る音符かな
八月 136回
筆あとを露にとどむ星今宵
七月 135回
一滴を急須振り出す新茶かな
六月 134回
膝枕寝釈迦ときめて耳掃除
五月 133回
盆栽へ今朝たつぷりと春の水
四月 132回
杉並木例幣使街道風光る
三月 131回
ひとはみなひとつ𦜝もつ建国日
二月 130回
しあはせの形さまざま日向ぼこ
一月 129回
霜の朝鼻をくすぐる鼻毛かな

2015年(平成27年)の作品 (128回~117回)

十二月 128回
幼き日の押せばつるりと衣被
十一月 127回
秋深し妻に針穴難儀なり
十月 126回
菊の日や一息入れて般若湯
九月 125回
裏町に裏町の顔月見草
八月 124回
光年の夕星ひそと夏の果て
七月 123回
ゆつたりとうねる茶畑口ずさむ
六月 122回
決着の一目半や汗拭ふ
五月 121回
線路のむかふ早春の凪ぎの海
四月 120回
青き空桜はさらにさくら色
三月 119回
おみくじを結びし梅のさかりなり
二月 118回
せせらぎをまたぎ七草摘みにけり
一月 117回
心地よき地球の自転や初御空

2014年(平成26年)の作品 (116回~105回)

十二月 116回
我前に己の影や秋の暮
十一月 115回
蜻蛉にはとんぼの世界池の杭
十月 114回
捨て水にとまどふほどの虫の声
九月 113回
潮騒の駅に寄するか晩夏光
八月 112回
指揮棒の音を引き出す夏夕べ
七月 111回
土室より出てたる独活のみづみづし
六月 110回
白線を引き替え街も衣更
五月 109回
膝抱きて八十八夜の湯に浸る
四月 108回
孫の手と新聞片手椿東風
三月 107回
B29鉛筆ですかと卒業子
二月 106回
さくさくと小気味よき音霜柱
一月 105回
米寿とて常に青春寒椿

2013年(平成25年)の作品 (104回~93回)

十二月 104回
曳き売りの声の賑はふ路地の秋
十一月 103回
月光に虫と棲みたき思ひかな
十月 102回
庭下駄の鼻緒のしめり秋の朝
九月 101回
手花火にあとずさりして子犬かな
八月 100回
夏座敷畳の青きひとところ
七月 99回
嫁入船舳にさしてあやめ草
六月 98回
片足を流れの岩に芹洗ふ
五月 97回
小さき鼻つまみて又ねと春の駅
四月 96回
草青む小屋に立てかけ錆し鍬
三月 95回
淋しさのたまりとなりて竜の玉
二月 94回
冬銀河瞬かせをり大欅
一月 93回
この里へ骨埋むつもり落葉踏む

2012年(平成24年)の作品 (92回~81回)

十二月 92回
火の見櫓ありたるあたり鳥渡る
十一月 91回
連れ合ひとひとつ灯の下長き夜
十月 90回
広々と刈田を残し大落暉
九月 89回
甚平着て茨城弁の語尾跳ねる
八月 88回
夏潮や六角堂は正座せり
七月 87回
八十路とて今日は母の日暮れなずむ
六月 86回
げんげ田や兵隊ごつこ杳かなり
五月 85回
蒲公英や海見渡せる砲座跡
四月 84回
岩を噛む水音高し枝垂れ梅
三月 83回
贈られし杖に艶あり水温む
二月 82回
空つ風やみて孤独の社鈴
一月 81回
少年期の夢いずこなる木の葉髪

2011年(平成23年)の作品 (80回~69回)

十二月 80回
一人酌む酒は人肌ちゃんちゃんこ
十一月 79回
三三五五下校の子らへ秋高し
十月 78回
百幹のそろりとゆらぐ竹の春
九月 77回
蟹の子の逃げおくれたる忘れ潮
八月 76回
ひらかなの宙舞ふやうな竹落葉
七月 75回
大揺れの大地を覆ふ夏の草
六月 74回
街の色白さ増しけり更衣
五月 73回
無為の日をゆとりとしたる春惜しむ
四月 72回
地を染める酒酒落落の落ち椿
三月 71回
餅背負ひよちよち歩く桜東風
二月 70回
大欅ゆれてゆさぶる冬の雲
一月 69回
櫛を手にしんみり握る冬鏡

2010年(平成22年)の作品 (68回~57回)

十二月 68回
沖へむく古舟ひとつ冬の雨
十一月 67回
諍ひのありしあしたの鳳仙花
十月 66回
むらさきの味あらたなり秋の茄子
九月 65回
風に透く葉擦りの音や昼の虫
八月 64回
炎帝やわれ住む街をわしづかみ
七月 63回
見えるものみな押し黙る梅雨しとど
六月 62回
引く波に躓き拾ふ櫻貝
五月 61回
余花の道遠回りする茜空
四月 60回
妣と言ふほのかなにがさ蕗の薹
三月 59回
土匂ふ命育む弥生月
二月 58回
もぅいいかいまあだだよの春の声
一月 57回
遠声や丑から寅への除夜の鐘

2009年(平成21年)の作品 (56回~45回)

十二月 56回
寡黙なる待合室の黄菊かな
十一月 55回
女郎花少しはなれて男郎花
十月 54回
燈さずに月にしばしの思ひかな
九月 53回
ウオ―キング秋蚊つき来る上り口
八月 52回
雨の中雨情の生家かたつむり
七月 51回
平然と厨を覗く女郎蜘蛛
六月 50回
坂の街家みな初夏の海へむく
五月 49回
春の水石のふくらみあるやうな
四月 48回
春寒や昼を灯して三夜尊
三月 47回
針供養口で糸きる母をふと
二月 46回
星冴ゆる尖れる風を顔にうく
一月 45回
和太鼓の五臓六腑に初詣

2008年(平成20年)の作品 (44回~33回)

十二月 44回
そむけ合ふ残菊束ねくくりをり
十一月 43回
全山に絵の具塗るごと那須の秋
十月 42回
名月をつぎつぎ流るちぎれ雲
九月 41回
うたた寝に羅かける妻のゐて
八月 40回
八十路越え語り部として終戦日
八月 40回
夏祭野菜持ち寄りバーベキュー
七月 39回
風に透く白きうなじや藍浴衣
六月 38回
老妻の木の芽和なり星三つ
五月 37回
色濃き菜一畝残し畑を打つ
四月 36回
紅楼のありしあたりや柳の芽
三月 35回
雪解水坂東太郎つらぬけり
二月 34回
跨ぎみる京の丹後は雪催
一月 33回
上りきて海一望の初景色

2007年(平成19年)の作品 (32回~21回)

十二月 32回
東洋一の煙突ありし尾根の鷹
十一月 31回
旧道の旧家の構え柿たわわ
十月 30回
稲の秋真っただ中に筑波山
九月 29回
鼻先をぬらす一気の岩清水
八月 28回
入道雲どっかと跨ぐ神峰山
七月 27回
雨あがる終の色なる七変化
六月 26回
谷若葉朱の神橋は一文字
五月 25回
二百段上ればそこに春の月
四月 24回
ささくれた手にみづみづし蕗の薹
三月 23回
農事暦暖冬異変で早まりぬ
二月 22回
冬ざるる海一望の城址かな
一月 21回
走り根によろめき破魔矢鈴踊る

2006年(平成18年)の作品 (20回~9回)

十二月 20回
ほめ上手ほめられ上手の菊花展
十一月 19回
睦み合ふ仲間横目の赤とんぼ
十月 18回
常陸野の大落日や稲の波
九月 17回
防波堤へドーンと炸裂土用波
八月 16回
花笠祭紅の蹴出しの勢揃ひ
七月 15回
涼風に胸をはだける丸木橋
六月 14回
芍薬の自尊てふ花夕づくる
五月 13回
郷愁をそそる辛夷や遠嶺雲
四月 12回
観梅の茨城弁の座となりぬ
三月 11回
花鋏持つ手ひんやり水仙花
二月 10回
雪霏霏と山の素顔かくしたり

2005年(平成17年)の作品 (8回~1回)

十二月 8回
作者不詳案山子の乙女はにかめり
十一月 7回
落葉踏む木立の向こう鹿島灘