2021年(令和3年)の作品 (189回~)

二月 190回
春日差す微笑む妻の遺影かな
二月 190回
春立つや形見の作務衣羽織る夜
二月 190回
春寒や母の自分史繰る夜更け
一月 189回
手袋やはめて十指に力満つ

2020年(令和2年)の作品 (188回~177回)

十二月 188回
時雨るるや墓に布団を着せたき夜
十二月 188回
コロナ禍と無縁の八十路冬日和
十一月 187回
いつよりや手を突き立つは初炬燵
十一月 187回
露けしや扶養家族を持たぬ身に
十月 186回
新仏と差し向かひ酌む夜長かな
九月 185回
星月夜年の順なき定めかな
八月 184回
止むなくてリモート帰省盆の夜
七月 183回
父の日や免許返納迫らるる
六月 182回
共白髪薬味それぞれ冷奴
五月 181回
コロナ禍も大和の国や田を植うる
四月 180回
漢ありて老桜遺し百余年
三月 179回
ただならぬ世やマスクして老い隠す
二月 178回
梅が香や寝ねんとするも名残惜し
一月 177回
病妻と目と目で交わす御慶かな

2019年(平成31年、令和元年)の作品 (176回~165回)

十二月 176回
時雨るるや空家あちこち古団地
十一月 175回
木枯しと彷徨ふ先や赤暖簾
十月 174回
長き夜や妻の蔵書の古びたる
九月 173回
虫の夜や亡き師ひそかに呼ぶやうな
八月 172回
健やかに老いる幸せ衣被
七月 171回
傘寿なら邪心捨てよと雲の峰
六月 170回
少女等の銀輪光る麦の秋
六月 170回
青田風八十路の姉のバイク来る
六月 170回
老いぬれば後へ後への衣更
五月 169回
春雨や古式ゆかしき御代替り
五月 169回
君在れば春爛漫と詠むものを
四月 168回
八十の春名入りの杖の祝ひかな
四月 168回
「令和」とや祝意満ちたる花の宴
三月 167回
沈丁の香に励まさる八十路かな
二月 166回
稀勢の里に綱の掟や春待てず
一月 165回
塗椀も味も家伝の雑煮かな

2018年(平成30年)の作品 (164回~153回)

十二月 164回
病む妻の喜色ほのかや寒卵
十一月 163回
丹精の絵手紙届く小春かな
十月 162回
十六夜や眺めては読む枕草子
九月 161回
新涼や磨き上げたる能舞台
八月 160回
天の川あまたの星の加はれり
七月 159回
空蝉や喜寿にも脱皮かなうなら
六月 158回
青梅雨や見舞ひ待つ妻見舞ふ夫
五月 157回
鞦韆を立ちこぐ少女天を衝く
四月 156回
群れてよし独りまたよし花見かな
三月 155回
俳壇の切り抜き増へし春炬燵
二月 154回
仕舞ひ湯のもの思ひ覚む猫の恋
一月 153回
初句会新たに主宰迎へけり

2017年(平成29年)の作品 (152回~141回)

十二月 152回
晩学の歩み急くなよ冬木の芽
十一月 151回
時雨れる夜『奥の細道』いま佳境
十月 150回
老い二人はなればなれに秋深む
九月 149回
登高やさびれる企業城下町
八月 148回
西瓜食む種も笑顔もはじけたり
七月 147回
俄か雨居間に藪蚊を連れて来し
六月 146回
梅雨寒や今日より主宰なき句会
五月 145回
風薫る師弟のゆかし俳句展
四月 144回
花の道天寿と云へどさりながら
三月 143回
幻の大煙突や山笑ふ
二月 142回
長々としり取り遊び日脚伸ぶ
一月 141回
眠る子の頬くれなひに初明

2016年(平成28年)の作品 (140回~129回)

十二月 140回
詩舞剣舞ありてめでたき年忘れ
十一月 139回
秋麗傘寿の画家の講演会
十月 138回
粛々と今年米炊く夕べかな
九月 137回
三粒五粒七粒葡萄きりもなし
八月 136回
俳句もて不戦を説きし生身魂
七月 135回
夏帽子初外泊に浮かれをり
六月 134回
征きしまま父の革靴黴にけり
五月 133回
花こぶし介護施設の鎮魂歌
四月 132回
陽炎へ遠ざかり行く鼓笛隊
三月 131回
手の届くあたり物置く春炬燵
二月 130回
登校日小走り阻む春一番
一月 129回
乗初や拭き清めたる車椅子

2015年(平成27年)の作品 (128回~117回)

十二月 128回
旅人として木枯らしを連れ帰る
十一月 127回
錦秋やなんぞ華やぐわが命
十月 126回
かくれんぼ鬼忘れをり秋夕焼
九月 125回
鈴虫や二合の酒にほど酔ひて
八月 124回
広島の蝉鳴きやめよ八時十五分
七月 123回
はじめての外出許可や梅雨晴間
六月 122回
衣更して病妻の華となる
五月 121回
刈り上げるうなじの青し夏来る
四月 120回
青き空桜はさらにさくら色
三月 119回
朝日射す病の床や梅一枝
二月 118回
教会の窓開け放つ四温かな
一月 117回
熱燗や息つぐ間なき話しぶり

2014年(平成26年)の作品 (116回~105回)

十二月 116回
にごり酒三升ほどの年用意
十一月 115回
二、三本持って行けよと大根引
十月 114回
秋の灯にひとり酌みつつ枕草子
九月 113回
新涼や子役凛々しき船弁慶
八月 112回
熟睡の幼子握る扇かな
七月 111回
緑陰や時報代はりの「七つの子」
六月 110回
老い先の思案してゐて明易き
五月 109回
卯の花や姉の唄ひし日の遠し
四月 108回
春田打つ卑弥呼の御代もかくあらむ
三月 107回
涅槃西風小脇に抱へ初句集
二月 106回
着ぶくれて行商媼たくましき
一月 105回
今日よりは則天去私と初御空

2013年(平成25年)の作品 (104回~93回)

十二月 104回
カレンダー取り替へるのも年用意
十一月 103回
一人居や新米の香の炊き上がる
十月 102回
お見舞に木犀一枝添へにけり
九月 101回
原発の廃炉進まず三度の夏
八月 100回
朝顔や人待ち顔に咲きそろふ
七月 99回
梅雨明けや看護科生の声弾む
六月 98回
梅雨晴や無精返上梅落とし
五月 97回
葉桜の大樹堂々揺るぎなし
四月 96回
娘とのたまの晩酌木の芽和
三月 95回
三陸の東風をはらみて大漁旗
二月 94回
嫁からの宅急便やバレンタイン
一月 93回
願ふこと二つ加へる初詣

2012年(平成24年)の作品 (92回~81回)

十二月 92回
一切のことそのままに年詰まる
十一月 91回
白菜を砲弾のごと抱へけり
十月 90回
不器用の炊く新米の香りかな
九月 89回
わが影へおどけて見せる秋の暮
八月 88回
一族の要となりて生身魂
七月 87回
いにしえのすだま宿れる泉かな
六月 86回
廃校の自然塾とし若葉風
五月 85回
四月尽玉葱畑の地割れかな
四月 84回
登校児の二列縦隊桜東風
三月 83回
久闊を叙して春田を打ち始む
二月 82回
紅梅のふくらみきれぬ寒さかな
一月 81回
大寒や水底に潜む小鮒かな

2011年(平成23年)の作品 (80回~69回)

十二月 80回
老いぬれば妻ありてこそ冬の夜
十一月 79回
葱好きの老いの二人や恙無し
十月 78回
三陸へ鎮魂の旅秋時雨
九月 77回
新涼や身重の嫁の身繕ひ
八月 76回
流星やはるか故郷の恩師逝く
七月 75回
万緑や十期総会無事終へり
六月 74回
復興の槌音高し夏の空
五月 73回
風評に流れぬ友の大いちご
四月 72回
大地震や外に出てみれば春満月
三月 71回
譲り合う湯たんぽ一つ余震の夜
二月 70回
村抱き流れる川や梅香る
一月 69回
餅搗きの天地の精気呼び起こす

2010年(平成22年)の作品 (68回~57回)

十二月 68回
銀婚の妻老いもせず年の市
十一月 67回
ほのぼのと恩師を囲み暮の秋
十月 66回
好物の枝豆御飯炊きて待つ
九月 65回
ひでり田や水遣り十日鴉鳴く
八月 64回
語り部の亡き数に入る敗戦日
七月 63回
鱶並ぶ鰭は剥がれて夏の市
六月 62回
そら豆剥ぎ土の恵みを言ひ合へり
五月 61回
大ぶりな妻の手造り柏餅
四月 60回
手を繋ぎ春疾風の一年生
三月 59回
啓蟄や古びし居間を模様替へ
二月 58回
予後の身や舌にとろりと煮大根
一月 57回
手付かずの新刊重ね去年今年

2009年(平成21年)の作品 (56回~45回)

十二月 56回
おもむろにマフラーを捲く夜勤かな
十一月 55回
妻といふ戦友といふ冬支度
十月 54回
中秋の月を見よとのメ-ルかな
九月 53回
母を看取りし介護日誌を繰る夜長
八月 52回
蜩や開墾の跡たどり行く
七月 51回
風薫るレマン湖畔の水明り
六月 50回
総会を終へてジョギング青田晴
五月 49回
薫風へブランコ海へ少女かな
四月 48回
ランドセル弾ませて行く花の下
三月 47回
芽柳を仰ぎて漱石ゆかりの湯
二月 46回
下萌やもう一息の逆上がり
一月 45回
切干のたちまち乾ぶ日和かな

2008年(平成20年)の作品 (44回~33回)

十二月 44回
冬紅葉ついの一葉も散りにけり
十一月 43回
廃校を埋む銀杏の黄葉かな
十月 42回
木の実降る防空壕のかくれんぼ
九月 41回
坊守の折り目正しき藍浴衣
八月 40回
行水の湯は手作りの温水器
七月 39回
三百本の葱植えし夜のビールかな
六月 38回
青田かぜ車椅子押す回り道
五月 37回
湯のあとは岩魚尽くしの夜の膳
四月 36回
鬨あげるごと真夜の赤椿
三月 35回
保育士の口調そっくり卒園す
二月 34回
薄氷に軍手のありしあしたかな
一月 33回
山海の幸ちりばめて雑煮かな

2007年(平成19年)の作品 (32回~21回)

十二月 32回
支えつつ支えられつつ年暮れる
十一月 31回
気合でも抜けぬ手ごわき大根あり
十月 30回
秋の夜の寝息うかがふ介護室
九月 29回
寝惜しみて文庫3冊秋灯し
八月 28回
溝萩や湖のはるかに磐梯山
七月 27回
虫食いと諦めおりし球菜かな
六月 26回
旧友の廃屋なるや柿若葉
五月 25回
手作りの手をはみ出せる柏餅
四月 24回
爆笑のチューリップ群れ昼下がり
三月 23回
校庭や半袖短パン東風突いて
二月 22回
校庭に待ち合わせする大冬木
一月 21回
熱燗や横目に妻の長電話

2006年(平成18年)の作品 (20回~9回)

十二月 20回
年の暮事定まりて蕎麦を打つ
十一月 19回
よどみなく婦唱夫随の障子張り
十月 18回
枕辺に毬栗一つ見舞い客
九月 17回
子等を呼ぶ間もなく褪せて秋夕焼け
八月 16回
完熟の両手に溢れミニトマト
七月 15回
江戸切子梅酒の琥珀湛へあり
六月 14回
梅雨の朝聖書を開き旅立てり
五月 13回
車椅子野中の小径風光る
四月 12回
故郷の桜吹雪に身を任す
三月 11回
卒寿にも色のありけり梅の花
一月 9回
始発駅蹠疼く寒さかな

2005年(平成17年)の作品 (8回~1回)

七月 3回
嫁姑蚊遣りの煙穏やかに